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統合失調症と気分障害について

成増厚生病院 精神科
横山雄二

誰でもなり得る病気です

統合失調症はおよそ100人に1人が一生のどこか(多くは15歳~54歳)でこの病気にかかると言われています。
気分障害には、うつ病や躁うつ病(双極性障害)などが含まれます。
うつ病は子供から高齢者まで世代を問わず発症する病気です。現在わが国ではおよそ10~15人に1人が一生のどこかでこの病気にかかると言われています。患者数は急速に増加しており、それはわが国だけでなく世界的な問題となっています。WHOでは「日常生活に支障をきたす疾患」として、2020年にはうつ病が心筋梗塞などの虚血性心疾患についで第2位になると予測しています。
躁うつ病はおよそ1000人に5~8人が生涯のどこか(多くは20歳代)で発症すると言われています。躁という漢字は「さわがしい」という意味です。躁うつ病は躁とうつを繰り返します。
なお、最近の研究ではうつ病と躁うつ病の境界が曖昧になってきており、両者の間の様々な移行型や不全型の存在に注目が集まっています。

どんな症状や障害が見られるでしょう?

統合失調症の急性期と呼ばれる症状の激しい時期には、幻覚・妄想、まとまらない言動、興奮などの症状(陽性症状)が目立ちます。注意して見るとそれらは強い不安に彩られています。休息期と呼ばれる時期には意欲の低下、感情の平板化などの症状(陰性症状)が目立ち、不活発な生活を送ります。その後は徐々にその人のペースで回復して行きます。思考力・注意力・記憶力などの低下(認知障害)がみられることもあります。
統合失調症は精神病未治療期間(DUP)が短いほどその後の経過がよいことがわかっています。そのためこころのリスク状態(ARMS)と呼ばれる統合失調症のリスクが高まった状態から治療が開始されるようになっています。
うつ病では、抑うつ気分、興味や喜びの喪失、不眠、意欲の低下、無価値感、思考力・判断力の低下、自殺念慮などが見られます。倦怠感、食欲低下などの身体の症状が出ることも忘れてはいけません。時にはそれらが目立ち、抑うつが目立たないことがあります(仮面うつ病)。ある高齢の女性は「頭の糸がこんがらがっていて、変だ、変だと思いながら長い間過ごしてきました」とのちに述懐しました。うつ病と気づくのはそれほど易しいことではないようです。
躁うつ病の躁状態では、高揚した気分、肥大した自尊心、思いつくと後先考えずに行動するなどの症状が見られます。

原因は何でしょう?

統合失調症も気分障害も原因はまだわかっていません。生まれながらの体質と生きて行くうえでのいろいろなストレスが重なって発症すると考えられています。
生物学的な研究によれば、統合失調症では神経伝達物質のひとつドーパミンの働きが脳のある部分で過剰になっていて、そのために陽性症状が出現し、また他の部分で不足しているために陰性症状や認知障害が起こっていることがわかっています。
またうつ病では神経伝達物質セロトニンノルアドレナリンの働きが不足していることがわかっています。

どのように治療するのでしょう?

治療はまず身体疾患を見逃さないことが大切です。例えばうつ状態の原因として貧血、甲状腺の病気、悪性腫瘍が隠れていたりします。そうした検査をしたうえで治療法は大きく薬物療法と心理社会的治療法の二つに分けることができます。
薬物療法は抗精神病薬、抗うつ薬、気分調整薬、抗不安薬などの薬物(向精神薬)によって行われます。抗精神病薬は主にドーパミンの働きを調整し、また抗うつ薬はセロトニンやノルアドレナリンの働きを調整しています。調整しているうちにそれぞれの神経伝達物質の働きが正常化して行くようです。今日の向精神薬は長足の進歩を遂げています。それらは症状を改善するだけでなく、副作用の少なさ飲み心地など患者さんの生活の質を重視しています。
心理社会的治療法には、精神療法(個人療法、集団療法)、作業療法、SST、社会資源の利用とそのための援助などが含まれます。そこでは自己理解、病気や治療の理解、ストレス対処能力の向上、対人関係の改善、生活技能の向上などが図られます。
最近まで脳の神経細胞は加齢とともに死んでいくものと信じられてきました。しかし脳科学の進歩により脳の神経組織は日々作り変えられていることがわかってきました。薬物療法もその他の治療法もそうしたプロセスを建設的な方向へ促進して行くもの、言い換えれば自己治癒力を引き出すもの、さらにひとりの人間全体として見れば自己実現の力を引き出すものと言えるでしょう。

本人の力と家族の力

病気を治すために本人の努力が大切であることは論を待たぬことでしょう。ところが統合失調症や躁うつ病などでは本人に病気の自覚が乏しいことが珍しくありません。これは「病気を受け入れたくない」という心理も関係するでしょうし、脳の前頭葉の機能の異常によるとする研究もあります。本人が病気と認めないため、治療に繋がらないことや、薬を飲まないことがよくあります。
治療に繋がらない場合、まずはご家族だけで医療機関や保健所に相談に行きましょう。私たちの経験ではご家族が相談に行くだけでもご本人によい影響を与えて行くようです。薬を飲まないこともよくあります。理由は「病気ではないから」「副作用が嫌だから」などいろいろです。そうした言葉には耳を澄ましたいものです。一人の人間として尊重され理解されていると感じれば、私たちは自分の問題を指摘されてもその人の指摘に素直に耳を傾けます。そして信頼と安心を感じるとき私たちは自発性を発揮するようになるでしょう。ただし、暴力、自殺などの緊急の問題には別の対応が必要となります。
これとは逆に、治療に対するご家族の不安が治療を阻害することもあります。医療機関や保健所で行われる家族のためのプログラムなどに参加して、まずご家族自身が治療について安心できることも大切です。

寛解から回復へ

症状がほぼ消失した状態が一定期間続くことを寛解と呼びます。しかしそれはまだ治療の中間点にすぎません。長く安定した後の自覚的および他覚的な生活の質の改善を待って初めて回復と言えます。治療のゴールはそこにあります。そこにゴールするには本人が主体的に治療に関わることが大切です。そのために治療者は本人の身になって、病気、治療、生活を彼らがどのように経験しているかを理解すること、そして長期的な戦略をもってそれに対応することが重要と思います。

翠会ヘルスケアグループの精神科医療
(スーパー救急から社会復帰と地域生活支援まで)

翠会ヘルスケアグループでは、統合失調症や気分障害を始めとする疾患について、上に述べた治療を実現するために様々な職種がチームを組み、また地域の人々と連携しながらつぎのような枠組みの医療を提供しています。
まず入院治療については、①夜間・休日の救急医療(成増厚生では、スーパー救急を実施)、②急性期の入院治療、③慢性期の入院治療、④社会復帰のための入院治療、⑤合併症治療などがあります。
また、外来治療については、⑥病院の外来機能のほか、⑦地域によってはサテライトクリニック(診療、訪問、デイケア)があります。また、地域での生活を支援するために、⑧地域支援室を中心にして様々の援助(訪問、服薬の継続のための援助、社会資源の利用のための援助、住居や食事の提供など)を行っています。家族とのパートナーシップのためには⑨家族プログラム(家族講座、家族SST、家族会への支援)を行っています。また、障害者の自立のために、⑩就労支援も大切な要素ですが、その体制づくりを検討しています。

翠会ヘルスケアグループのサービスネットワーク
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