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ストレスとその対応について

成増厚生病院 精神科
森  豊

誰にでもストレスはあります

現代社会はストレスの時代といわれるように私たちの周囲はストレスであふれています。ストレスとは本来、物理的・心理社会的刺激(ストレッサー)に対して生体が起こす反応のことを言います。一般的にはストレッサーとストレス反応の二つひっくるめてストレスと呼んでいることが多い様です。ストレスは情動面では不安や不眠を引き起こしたり、身体面では自律神経系、内分泌系、免疫系の反応(急性、慢性の双方あります)を引き起こします。
ストレスという言葉はマイナスのイメージが付きまとうことが多いですが、ストレスは必ずしも有害なもの、避けるべきものと決め付けられるものではありません。過剰なストレスは病的な反応をもたらしますが、全くストレスのない状態というのは外界との交流が全く失われた状況ですから、まるで生きているとはいえない状態です。ほどよい適量のストレスはストレス学説を唱えた生理学者のハンス・セリエも言うように「人生のスパイス」であり、それによってストレス耐性も高まり人間として成長していくひとつの機会ともなります。
またストレスは一般に快ストレス不快ストレスに分けられます。快ストレスとは私たちの体や心の健康にとって有益な反応を起こすようなストレスであり、不快ストレスとは病気を引き起こすような有害なストレスを言います。同じ状況であってもそのストレスの質は各個人の価値観や受け取り方に大きく左右されます。失敗に対して「取り返しがつかない」と感じるか「失敗から学んだことを次に生かそう」と捕らえるかで同じストレッサーに対しての反応は大きく異なります。セリエも「疲れや失敗」といった不快ストレスを「成功や充実」といった快ストレスに変換させるのにスポーツ、サウナ、冷たいシャワー、心理的リラクセーションなどが有効であると述べています。
ストレスはけっして避けることはできないものです。またむやみに避ける必要もないものです。ストレスの適度な量と質をコントロールしていくことが大切なことなのです。
ご自分のストレス度をストレスチェックで計ってみてください。

ストレスと認知してはじめて有害な反応が生じます

ストレッサーはまずストレスフルな刺激として認知されて初めてストレス反応を引き起こします。そもそもストレスフルであると認知されなければそれに対して有害な反応も起きないわけです。またストレスと認知されても、その人の持つ周囲の支え(ソシアルサポート・リソース)や適切なストレス対処行動(コーピング)があればストレス反応は小さくなります。
ストレスはその人の考え方や受け取り方と云った認知の影響を強く受けるため認知再構成法のような認知行動療法の技法によってもストレスコントロールの改善が期待できます。認知再構成法とは過度にネガティブな気分を引き起こしたり、回避的で問題解決に結びつかない行動を引き起こすことに焦点をあて、そのような機能的ではない認知を修正していくための認知行動療法の技法です。具体的には強いストレスを感じる場面においてパッと頭によぎる考えやイメージ(自動思考)を同定し、自動思考に根拠があるか、あるいは自動思考が自分にどのような有用性をもたらすかといった自動思考の機能について検討し、今まで生じていた自動思考とは別の、より機能的な思考を新たに案出するという形で進めます。ストレスは心身症のような身体的疾患ををはじめ、うつ病をはじめとした様々な精神的疾患の原因や増悪因子になります。このため近年認知行動療法の有用性はいろいろな場面で高まってきています。

ストレスをコントロールする方法を身につけましょう

わたしたちはストレス状況に出合うと様々な対処のプロセスを実行していきます。一般にストレスをコントロールするやり方として、あるストレスフルな環境を自分の信念や希望に沿って変化させていく問題解決型コントロールと、外的環境の変化がうまくいかなかった時に自分の信念や希望を変化させて環境との折り合いをつけようとする情動調節型コントロールがあります。
いずれにしても、各個人がストレスフルな状況をコントロールできるかどうかは、状況の客観的な条件よりもむしろ状況をどのように評価するか、あるいはストレスコントロールへの一般化された信念に規定されると言われています。つまり適切な評価や柔軟なストレスコントロールを行いうる自分自身の力や自分を取り巻く支えがあれば、かなり大きなストレスに対してもコントロールが可能であるということです。
ストレスが生じたときにそれをコントロールするために起こす具体的な対処行動をストレスコーピングと呼びます。自分がとりやすいコーピングを知り、それ以外のものへの知識を持つことはストレスコントロールを上げる効果をもたらします。コーピングは分類によって種々ありますがたとえば①問題に焦点を当てる、②他者の援助を求める、③視点の転換を図る、④情動発散、⑤回避する、⑥抑圧するなどの方法があります。
上記のように柔軟かつ意識的なストレスコントロールを行うことのできる知識や技術を得ることは円滑なストレスコントロールのための重要な要因となります。

ストレスから病気になるのは?

ストレスは自律神経や内分泌などの身体反応を起こし、それが慢性的に持続することで循環器、消化器などをはじめとする全身の心身症の原因となります。
また精神的には、大きなストレスが直接の原因となるPTSD適応障害といった病気だけでなく、うつ病でも心理的・社会的・身体的ストレスが発症に前駆して見られたり、再発や慢性化と大きく関連しています。加えてうつ病では視床下部―下垂体―副腎皮質(HPA)系機能の亢進が見られることが多く、この現象は動物やヒトに対するストレス負荷でHPA系の亢進が見られるという事実と一致しており、内分泌のレベルでうつ病とストレスは深い関係があることが示唆されています。うつ病の予防や治療においてストレスコントロールの考えが重要であるのはこのためです。
ご自分の抑うつ度もうつチェックで計ってみましょう。

翠会ヘルスケアグループのストレスケア

翠会ヘルスケアグループでは、ストレスに起因する精神的な疾患について、一時的な入院による、様々な職種によるケア体制を整えているところです。
これまでお話したように、一人一人の置かれた環境やストレスコントロールを含めた病気への対処、病状などは様々です。落ち着いた療養環境を整え、その場において、一人一人の治療上必要なニーズにできるだけ細やかに対応するオーダーメードの治療を理念としています。このため、多職種の専門チーム(入院主治医を含む)と患者様ご本人と一緒に、一人ひとりの治療ニーズを確認し、治療内容についても精神療法、薬物療法の基本的なものからストレスをコントロールできるようになるプログラムをじっくり検討した上で、 ご本人、治療スタッフ共に定期的に確認しながら治療を進めていきます。
例えば、現在、ストレスケアユニットを既に開設した成増厚生病院では、個室を中心とした落ち着いた療養環境の中で、うつ病の治療において必要となる、病気のはじめの段階(休息期)での良質で充分な休息を提供しています。こうした環境の中で、アロマテラピーをはじめとした様々なリラクセーションの手法を楽しみながら学んでいく集団および個人でのプログラムやストレスマネジメント等の基礎を学んでいく集団での心理教育的プログラム、心理・看護カウンセリングや心理検査等を通じて一人一人のストレスコーピングの特徴を振り返り気分の波を乗りこなしていくことを共に考えていくサポート、同じ病気を持つ方同士の体験を話し合うピアカウンセリング(集団精神療法)での自己信頼の回復、復職支援のためのサポートなどの様々な治療プログラムを通して回復を支援しています。

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